●トヨタ アルファード/ヴェルファイア
アルファードデビューの2002年は、
日韓ワールドカップが開催された年。
ベッカムヘアーや日本代表のユニフォーム姿が街にあふれていました。
ミニバンが売れるのは移動するお茶の間だから?
「いつかはクラウン」だったのが、いまやすっかり「いつかはアル/ヴェル」になった。裕福そうなファミリーはもちろん、政治家や芸能界でも乗ってる人が大勢いるし、地方でも若い子が中古車を買ってドレスアップしているのをよく見かける。
それだけ魅力があるということだろうけど、こういうクルマが売れるというのは日本特有の文化に違いない。住宅事情に恵まれていない日本では、そのうっぷんをクルマに託すわけだよね。
その点、車格の高いミニバンほど広くて豪華になるわけだから、どうせ買うならアル/ヴェルとなる気持ちはよくわかる。だから売れているんだろうけどね。
そもそもミニバンは大人数が乗れるのはもちろん、ゴルフバッグぐらいなら積みっぱなしで家まで運ぶ必要もないし、サーフィンの道具のように大きな荷物も中に積めるし、とにかく便利。後ろでテレビを観たりゲームしたりできるし、上級モデルほど性能も高くなって、こんなに大きくて重たいクルマでもストレスなく走れるわけだし。
僕自身はミニバンに〝高級?は求めないんだけど、アル/ヴェルの中でも、飛行機のファーストクラスみたいなシートが付いた「エグゼクティブラウンジ」が、700万円以上するのに1割も売れてるなんて、驚いちゃうよね。
僕はミニバンというは、現代の幌馬車だと思っている。家族みんなで乗って自由に好きなところに出かけられるところがイイ。
いろんな外の景色を見られるし、大雨や強風で怖い思いをするときもあるけど、そういう経験も含めて家の中では絶対に味わえないことがたくさんあって、それは家族にとってかけがえのない思い出になるよね。
それにクルマに乗ると家族みんなが同じ方向をむいて座るというところにも、実は大きな意味がある。
家の中だとみんなバラバラだけど、クルマの中では3列みんな同じだから自然と会話に統一感が生まれて、直接目を合わせないぶん好きなことも言えて、ふだん話せないことが話せたりするものだよね。実はミニバンというのは、お茶の間よりもずっと家庭的な空間なんだよ。それがアル/ヴェルのようなクルマだったら、より広々とした空間で、快適に移動しながら時間を共有できるところがイイよね。
ワクワクできる可能性が、ミニバンには、まだまだある!
若い人にとっては、最近では「デートカー」という言葉も使われなくなったけど、こういうクルマこそまさしく本来の意味でのデートカーになる。
いわゆるデートカーというのはスタイリッシュだけど、狭いから中でイチャイチャできないでしょ? でもミニバンなら大丈夫。
途中でコンビニに寄って何か買って、海辺やどこでも好きなところで、ゆっくりふたりの時間を楽しめる。
最近では車中泊のためのアイテムも充実していて、バイザーを付けて外から車内が見えないようにできるから、いざとなればもっと楽しいことだってできる(笑)。
昔はデートカーでホテルに行っていたけど、ミニバンがあれば行く必要もない。
そのぶんデート費用の節約にもなるし、恥ずかしい思いをすることもないよね。
いろいろ考えると、ミニバンというのはとても効率的なんだよね。ひとたびその便利さを知ったら、もう昔のデートカーには戻れない。それが広くて豪華なクルマだったらうれしいのは誰しも同じだろうね。
ただ、今の時代は派手な外見が好まれるようだけど、ここまでくるとちょっと怖いよね。
日本でも軽自動車のハイトワゴンあたりはデザインがカワイくて色使いも斬新で、200万円以下の世界はとてもキュートなのに、400万円を超えるととたんにこうなっちゃうんだよね。そのほうが売れるからこうなったんだろうけど、それって罪だよね。
メーカーのデザイナーにとっても本意じゃないと思う。いまどきのシンプルでオシャレな新築の家の駐車場にこのクルマが止まっていると、ぜんぜん似合わなくて絵にならないよ。
僕はクルマが大好きだからあえて一言いいたいんだけど、僕らが子どもの頃に未来のクルマを描いた、鉄腕アトムとかに出てきそうな、もっと流麗なデザインをミニバンがあってもイイと思うんだよね。
その意味ではむしろエスティマのほうがイメージに近いよ。
あとは、ミニバンのオープンカーだよね。よく都内では屋根のないバスが観光で走っているのを見かけるけど、楽しそうじゃない?
むろん数は売れないだろうけど、ああいう発想をミニバンに採り入れても面白いんじゃないかと思うんだよね。どこかやってくれないかな。